惑溺

「リョウくんの言葉が全て本心なのかはわかんないけど、あんな分かりずらい男、苦労するからやめといたほうがいいよ。
やっぱり優しくて安心できる男が一番だよ。聡史さんみたいなさ」

聡史。
その名前を聞いて、ぎゅっと心臓が痛んだ。
思わず服の上から心臓のあたりを握る。
今まで麻痺していた罪悪感。それが私の心臓を苦しいくらいに締め付ける。

聡史にも、全てを話さなきゃ。
正直に話して謝らなきゃ。

許してもらえるなんて思わない。
でも、私には謝る事しか出来ない……。

そう思った時



「リョウって、誰?」

背後から、聞きなれた声でそう尋ねられた。


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