惑溺
 

「ごめんなさい、聡史さん。
アタシがあの時由佳にその知り合いを合わせちゃったから……」

いつもは強気で明るい博美が、そう言って静かに聡史に向かって頭を下げた。

「博美……」

謝らないでよ。
悪いのは全部私なのに。
博美が謝る必要なんて、少しもないのに……!

頭を下げた博美に向かって慌ててそう言おうとした時

「博美ちゃんは悪くない。そんな風に頭を下げないで。
悪いのは、由佳と、そのリョウって男と、そして俺だよ」

聡史が穏やかにそう言った。

「聡史……?」

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