惑溺
説明や弁解なんかせず
何にも執着せず
何にも囚われず
いつだって冷たく孤独なリョウ。
人生の全てを諦めたような投げやりな口調で、あの黒い冷たい瞳で
『もういいよ、学校辞めればいいんだろ?』
なんて言うリョウが想像できた。
「慌てて引き止めて、保護者と話をしようとしたんだけど。
アイツの家、複雑でさ。
こんな子供に対して無関心な親がいるのかと思ったら、やりきれなかった」
テーブルに置かれた冷たいビールの入ったグラス。
黄金色の液体の中、浮かび上がっては消える小さな気泡を見ながら聡史はため息をついた。
「複雑、って……?」