惑溺
『それでさぁ、その合コン行ったらなんか勘違いした男しかいなくて!』
「ふーん、勘違いって?」
『自分がモテるって勘違いしてんの!
いや確かにモテそうな雰囲気ではあるんだけど、お前髪型とメガネで誤魔化してるだけだろ!みたいなさぁ』
1LDKのアパートの一室。
居心地のいい自分のベッドの上で、受話器の向こうから聞こえる博美の興奮気味の声に思わず苦笑いした。
『あーあ、どっかに真面目で誠実で優しい男はいないかなぁー』
前の彼と別れて、もう1年近く彼氏のいない博美は、最近よく電話をかけてきては『いい男がいない!』と嘆いていた。