惑溺
『もうすぐクリスマスだっていうのに、彼氏がいないなんてー!!』
「もう!突然叫ばないでよ。
びっくりしてコーヒーこぼしそうになった」
『ごめん、ごめん。
だって本当にろくな男いないんだもん。
どっかに聡史さんみたいな、包容力のある大人の男いないかなぁ』
「じゃあ、聡史に誰か紹介してもらったら?
確か職場の同僚がなかなか彼女できないとか言ってたよ」
男がいないと嘆く博美に私がそう提案すると、
『嫌だ!』
と、即答で却下された。
『高校の先生なんて、なんか嫌!
女子高生に囲まれて鼻の下伸ばしてウホウホしてそう!』
「……ちょっと。
聡史みたいな男がいいとか言っといて、それは酷くない?」
呆れ返った私の声に、博美は悪びれもせずに笑った。