惑溺
 
『もうすぐクリスマスだっていうのに、彼氏がいないなんてー!!』

「もう!突然叫ばないでよ。
びっくりしてコーヒーこぼしそうになった」

『ごめん、ごめん。
だって本当にろくな男いないんだもん。
どっかに聡史さんみたいな、包容力のある大人の男いないかなぁ』

「じゃあ、聡史に誰か紹介してもらったら?
確か職場の同僚がなかなか彼女できないとか言ってたよ」

男がいないと嘆く博美に私がそう提案すると、

『嫌だ!』

と、即答で却下された。

『高校の先生なんて、なんか嫌!
女子高生に囲まれて鼻の下伸ばしてウホウホしてそう!』

「……ちょっと。
聡史みたいな男がいいとか言っといて、それは酷くない?」

呆れ返った私の声に、博美は悪びれもせずに笑った。
< 259 / 507 >

この作品をシェア

pagetop