惑溺
冷たいタイル張りの壁にもたれかかり、ぼんやりと反対方向のホームを見ていた。
クリスマスだっていうのに、ひとりこんな浮かない顔をして、目に映る色鮮やかな景色の中に溶け込めない自分がひどく孤独に思える。
私だけ別世界にいるような疎外感。
リョウと会わないと決めたあの日から、私の世界は熱を失ったように冷たく色褪せていった。
毎日同じ事の繰り返し。
何も考えないように、何も感じないように、うつむいて耳を塞いで。
なんとか日々をやり過ごして。
時折、空っぽの私の身体の中心で燻るリョウの記憶が、不意に炎を上げ燃え上がる。
その身を焼くような痛み。
それを両手を握りしめて堪える。
そうやって、彼を忘れよう忘れようと必死でもがいてる。