惑溺
目を逸らしたかった。
それなのに、私の視線は強い力で縛り付けられてしまったように、瞬きすらできずにリョウをみつめたまま動けなかった。
リョウは私が自分の事を見ている事を確認すると、すっと左手を顔の前に持ち上げて見せる。
そのにあるのは、私が残した茶色のシュシュ。
その光景を見て息をのんだ。
体中の血管を巡る血液の勢いに、体が震える。
どくん、どくんと脈打つ心臓の音以外何も聞こえなくなった。
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