惑溺
聡史にも、博美にも
もうリョウとは二度と会わないと約束した。
もうあのふたりを裏切るなんてできない。
これ以上、情けない事なんてしたくない。
……それに
あんな苦しい思いをするのはもう嫌。
本当はまだ、リョウの事が、好きで好きで堪らない。
だから、もう嫌。
また馬鹿な期待をして傷つけられるのは、嫌……。
私は流されるまま地下鉄の車輌に乗り、リョウがいる向かいのホーム側の窓に背を向けて立った。
ブザーが鳴り
ゆっくりと扉が閉まる。