惑溺
 

重い鉄の車体を揺らすようにして、ゆっくりと動き出す地下鉄。

ガタン、カタン、
車輌の振動に体が揺れてよろめいた。

咄嗟に手すりに掴まり顔を上げると、視界に入った向かいのホーム。
ゆっくりと遠ざかってゆく人で溢れた景色。



その中で、
リョウはただまっすぐに私の事を見ていた。

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