惑溺


どうせ叶わない恋なら
最初から出会いたくなかった

どうせ愛してくれないなら
全て忘れてしまいたかった



私は、聡史や博美を裏切るのが怖かったんじゃない。

ただ、自分が傷つくのが怖くて
これ以上苦しむのが嫌で

まっすぐに私をみつめるリョウから目を背けた。





ガタン、カタン。
スピードを上げてゆく地下鉄。

一瞬で、
窓の外は真っ暗な闇になった。


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