惑溺
だけど、どうしてもひとりでいられなかったの。
あのまま自分の部屋に帰ったら、ずっとリョウの事を考えてしまう。
きっと耐えられずにリョウのマンションに向かってしまう。
リョウのマンションの部屋の前で羽根を広げた蝶の様に、華奢な背中を震わせて泣く女の子。
あの子の様に、きっと私もリョウにすがりついて泣いてしまう。
『愛してたのに……』
そう言ってすがりつく女の子を見下ろす、リョウの蔑むような冷たい視線。
綺麗な唇から吐き出される、感情のない残酷な言葉。
きっと、リョウは私の事もそうやって突き放して、唇を歪めて笑うんだ。