惑溺

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「そういえばリョウ知ってた?
俺らが3年だったときの担任の加藤センセー、結婚したんだって」


 
夜も更け、もう夜明けと言った方がしっくりくるような時間に、ふらりと店に来た高校時代の同級生の木暮が、酔っ払って呂律の回らない口調でそう言った。

不意打ちで耳にしたその名前に、思わずグラスを持つ手が止まった。
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