惑溺
 
「えー、嘘つくなよ!
お前高校の時から、年上の女と同棲したり貢がせたりしてただろ。
リョウって女を捨てたことあっても、振られた事なんてなさそう」

年上の女と同棲したり貢がせたり……。
人聞きの悪い事言うなよ。
いや、全部嘘だとは言い返せないんだけど。
やっぱり他に客がいなくて助かった。

「別に捨てたことなんてないよ。
いつも女のほうから俺に愛想つかして出ていった」

「マジで?」

全く信用していない表情で俺を睨む木暮に頷いてみせる。



どの恋愛も最初はそれなりに幸せだった。
別に尽くしてくれなくても、貢いでくれなくても、ただ側にいて温もりを感じていられれば、それで俺は満足できた。
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