惑溺
確か俺が14歳の時。
はじめてまともに付き合った年上の彼女との恋愛は、うんざりするような嫉妬と束縛の毎日の果てに、お互いを憎み合うようになって終わった。
はじめて心から愛しいと思った女が、俺を蔑む様な瞳で睨んで
『リョウはなにか大切な物が欠落してるよ。
家族に愛されなかったから、きっと人を愛せないんだよ』
そう言って去っていく後ろ姿。
あぁ、そうか。
その言葉に、妙に納得したのを覚えてる。
いつも家族に疎まれ続けた俺が、人を愛する事なんてできるはずがない。
言い寄ってくる女と手当たり次第に付き合いながら
『リョウ、愛してる』
なんて軽々しく言う女を、どうせこの女もすぐに去っていくんだろう、と冷めた目で見てた。