惑溺
それでも乾杯したいと言って聞かない木暮に、俺は渋々ビールを2杯注ぐ。
「ほらリョウ、乾杯するぞ。乾杯!」
「男二人でこんな夜更けに乾杯かよ。何に乾杯?」
「俺の失恋に」
くだらねー、と笑いつつグラスを合わせ音を鳴らす。
木暮は乾杯したら満足したらしく、グラスに口をつけないまま、またぼやきはじめた。
「明日はクリスマスイブだってのに、なんで振られるかなぁ……。
他に好きな男が出来たんだってさ。
せめてクリスマスが終わるまで待ってくれればいいのに。
用意したプレゼントはどうしろっていうんだよ。
本当に惨めすぎる……」
なんてぶつぶつ言いながら、すっかり落ち込んで肩を落とす木暮。
いつもの俺なら、そんな事俺には関係ない、なんて放っておくんだろうけど、何故だか今日は久しぶりに会った同級生を慰めてやりたくなった。