惑溺
「え、マジで?いいの?
でも俺けっこう飲んだけど……」
それでも、もじもじと財布を開こうとする木暮の生真面目さが、なんだかツボに入って笑ってしまう。
「いいって。その代わり彼女出来たら連れて飲みに来いよ」
すると木暮は急に真顔になってきっぱりと首を横に振った。
「絶対やだ。俺は騙されないぞ」
「は?」
「俺は知ってるんだ。
女ってヤツは、リョウみたいなちょっと悪そうな男に弱いんだ。
彼女をお前なんかに会わせたら、またクリスマス直前に『好きな人が出来たの』なんて振られるに決まってる」
俺を睨み付けて真顔で言い放つ木暮に、腹を抱えて笑った。