惑溺
 
「俺だって騙されねぇよ」

笑いすぎて出てきた涙を指で拭う。

「女ってヤツは、悪そうな男が好きだとか言いながら、結局最後は真面目でつまらないどっかの教師みたいな男を選ぶんだよ」

俺の言葉に木暮は一瞬ぽかんとした後、なるほどなと頷いた。

「そっかぁ。じゃあ俺、教師を目指せばいいのか」

「女目的で教師を志すなんて、動機が不純だな。
……でも、木暮なら意外といい先生になるかもな」

俺の言葉に嬉しそうに頷くと、木暮はジャケットを羽織りよたよたとおぼつかない足取りで出口へと歩いて行く。
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