惑溺
 
「何言ってるの。もう10時になるよ?
新婚さんが旦那ほっといてイブに遊んでていいの?」

ここ数年の恒例になりつつある、女二人のクリスマスディナー。
今年はさすがに、新婚の博美をイブに誘うなんて聡史に悪いと遠慮したのに、
『どうせ聡史はイブも残業だから女ふたりで美味しい物食べに行こうよ』と言ってきかない博美に甘えて一緒にクリスマスを過ごしていた。

だけど。

「さすがにもう残業終わって家で待ってるんじゃない?
これ以上博美を独り占めしたら聡史に怒られるよ」

そう言った私の言葉に、博美は思いきり鼻にシワを寄せた。

「聡史なんて毎日飽きるくらい顔見てるからいいの!
せっかく由佳と会ってるんだから、独身気分に戻らせてよ」


そんな可愛くない事を言って。

本当は博美が、私の事を気づかってクリスマスイブを私と過ごしてくれているの
知っているから、思わず胸が熱くなった。
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