惑溺
 
夕方から降り出した雪は強さを増していて、街は真っ白になっていた。

レストランから出た私たちは、とりあえず目についたコーヒーショップに入り窓際に並んで座る。
大きなガラス張りの窓越しに見える雪の中のイルミネーションは、まるで飾られたショーウインドーを見ているように幻想的で綺麗だった。


「んで?どこでリョウくんに会ったって?」

景色にみとれていた私に向かって、博美はニヤニヤしながら問い詰める。

「偶然会っただけなんだけどね。
さっき本屋に寄った時に後ろから声かけられて、振り向いたらリョウがいて。
ちょっと話して……」

博美の頼んだ抹茶ラテの柔らかい緑色を眺めながら、ぽつりぽつりと小声で話す私に

「ふーん。
んで?相変わらずイイ男だった?」

博美はからかうように笑った。
< 363 / 507 >

この作品をシェア

pagetop