惑溺
「もういいや。今度博美から聞くから」
意地悪なリョウに聞いたってどうせ教えてくれないんだ。
私はもう諦めて、ため息をついて歩き出す。
「本当に信用されてないな、俺」
「そういえば、今度博美が聡史とふたりでお店に遊びに行くって言ってたよ」
私がそう言った途端、リョウは露骨に嫌そうな顔をした。
その子供のような反応に思わず笑ってしまう。
「そんなに高校時代の担任に会うのが嫌なの?
どうせ悪い事ばっかりしてたんでしょ?」
「それ、本気で言ってんの?
お前鈍すぎるだろ」
「ん?」
「担任に会いたくないんじゃなくて。
好きな女の昔の男なんて、顔も見たくないだろ」
「…………」