惑溺
 
リョウの胸の上に顔を埋めていたはずが、気がつけば形勢は真逆に。

「11時か。じゃあまだ余裕だな」

私を見下ろし微笑む、美しい獣のような男。


「え、嘘でしょ?もうムリだよ……!」

慌てる私を面白がるように、リョウが喉を鳴らして笑った。

「ムリって何が?」

言いながら、リョウが私の足を持ち上げた。
足首からふくらはぎ、膝の裏へと舌を這わす。


「やっ……リョウ、ダメ!」

涙目でふるふると首を横に振ると、私を見下ろすリョウの綺麗な口元から覗いた白い歯がまるで鋭い牙に見えた。




獰猛な獣が牙をむく。

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