惑溺
 
「……で?この中なに?」

彼は腕の中の押し付けられた紙袋を見て、興味なさそうに聞いてきた。

「……プリンです!」

ここへ来る途中で買ってきた、私の大好物のとっておきのプリン。
小さな洋菓子屋さんが手作りで丁寧に作る瓶入りのプリンは、有名ではないけれど、誰にすすめても美味しいと言ってもらえるとっておきのお気に入りだ。


彼は紙袋を開けて中を覗きながら呟いた。


「あー、プリン。4つも」

そのうんざりしたような迷惑そうな顔に、私は腹がたった。


せっかく人が買ってきたのに、なにその態度。
ちょっと、失礼なんじゃない!?
せめて社交辞令でももうちょっと嬉しそうに出来ないの?

そう文句を言ってやろうと彼を睨み付けると、

「お茶でも入れるから食べていけよ」

彼は私の返事を待たずにそう言って立ち上がり、勝手にお湯を沸かし始めた。


「……は?」
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