惑溺
 
「ええと」

突然の質問に口ごもると

「いつもの?」

私が答える前にリョウがシェイカーを取り出す。

「うん。じゃあ、いつもので」

私が頷くと、リョウも目を細めて微かに頷いた。



リョウのカクテルを作る姿が好き。
丁寧に磨きあげられた銀色の道具が、リョウの綺麗な長い指の中で美しい弧を描き、間接照明の淡い光を反射する。
揺れる長めの黒い髪が、伏せた瞼に影を作る様子が色っぽくて、わたしは静かに息をひそめながらその様子にみとれていた。


「……相変わらずだな」

手を止めたリョウが、私を見て小さく笑った。

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