惑溺
「相変わらずって、何が?」
私が首をかしげると
「さぁな」
口角を片方だけ上げて、わざと口元を歪ませるような色っぽい微笑みで私を誤魔化す。
意地悪なリョウはいつもそうやって私に答えを教えてくれない。
教えてくれたっていいのに。
リョウの意地悪。
カウンターに頬杖をつき、ふくれっ面でリョウを睨んでいると
「はい」
カツン、と音をたてて目の前にグラスが置かれた。
丸みのあるタンブラーに入った淡い琥珀色のカクテル。
「あ、ありがとう」
『いつもの』と言うと、リョウが私のために作ってくれるカクテル。
コーヒーの香りのリキュールとミルクの優しい甘みの、淡い琥珀色のカクテル。