惑溺
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時計の針が定時の5時半を回り、フロア内の小さな給湯室で簡単に片づけをしていると、制服のポケットの中の携帯電話が震えた。
濡れた手をタオルで拭いて携帯を取り出すと、聡史からのメール。
6時半くらいには待ち合わせの場所に行けそうだというシンプルな内容だった。
絵文字もなにもないそのメールに、聡史らしいなぁと思いながらまた携帯電話をしまう。
これから着替えて会社を出れば、丁度いい時間だな。
と、洗って伏せておいたカップを軽く吹きながら食器棚に戻していると
「松田さん、今日はこれからデート?」
スーツ姿の男の人が一人、給湯室に入って来た。