惑溺

目の前に座る聡史の事を眺める。
決してかっこいい訳じゃないけど、物腰が柔らかくて人のよさそうな聡史。
一緒にいるだけで周りの人を安心させるような雰囲気を持っている優しい人。

あの冷たい瞳のリョウとは正反対……。


そう思ってから、無意識に二人を比べている自分に気がついて苦笑した。
リョウなんかと比べたら聡史に失礼だ。

「そう言う聡史はどう?最近忙しそうだよね」

そんな自分の気持ちを悟られないように、笑顔を作りながらたずねる。

「ああ、一応高3のクラスの担任だからなぁ。受験の追い込み時期だし大変だよ」

確かにすこし疲れた顔で笑う聡史。疲れのせいかいつもより少し小さく見えた。

「もう受験に向けて本気モードになってくれないと駄目なんだけどなー。
なかなかクラスの雰囲気が締まらなくて」

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