惑溺

「そうなんだ。
でももう高校生なんだから、本気で大学に受かりたいなら自然と真剣になるんじゃない?」

「まぁ普通はそうなんだけど。
うちのクラスは一番目立つ奴が受験しないから、なんとなく皆そいつの雰囲気に流されちゃってるんだよなぁ」

そう話す聡史はすっかり教師の顔だった。
いつもは見せない職場での顔を垣間見たようでなんだか不思議な気分……。



もし結婚したら、
こうやって毎日仕事の愚痴なんかを聞きながら、向かい合って夕食を食べるのかな。
そんな将来を想像してみても、幸せな気分に浸れない自分に罪悪感を抱いた。









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