激甘Milk*Tea+
「──松本先生。」
首を右にある窓に向け、まだ少し
ぼーっと空を見ていた俺の左上から声がした。
「……なんですか?」
振り返らなくてもわかる、人に媚びるようなその声に
空から目線をそらし、ゆっくりと振り返る。
「…今日の放課後、ちょっといい?」
他の職員には聞こえないよう、
そっと耳打ちをしたのは渡辺先生───もとい、リカさんだ。
俺が本気で大好きだった人。
そして、同じくらい大嫌いな人。
「無理です…って言ったら?」
俺にはもう大切にすべき人がいる。
守るべき人がいるんだ。
「そうね、手荒なことはしたくないんだけど。」
俺から離れ机にもたれ掛かり、
少し考えるように顎に手を当て
首を傾げながら俺に微笑みかける。
だいたいの男はこの仕草で堕ちるんだろうな。
大人の色気、と言うやつだろう。
ふっ、と相手には聞こえない程度に小さく笑った。
「……菅村さん、退学かな?」
「…は?」
いきなり出た秘美の名に、かなり驚きつつも
会話をしていること事態に驚きのある俺が
自分の感情を隠すのは容易いことだった。
「ふふ、隠すのが上手になったのね」
貼り付けたような笑顔を向けるこいつに
多少苛つきながらも、
「隠す?なにも隠していませんが」
ふっ、と笑ってみせた。