近いようで、遠い存在のキミ (完)
―――…
「……っちゃん!りっちゃん!?」
「えっ!?」
私はハッとして、目線を上げる。
すぐ目の前にゆうくんの顔がある。
「ひゃぁぁ!?」
ちっ近い!
私はズザッと1歩後ろに下がる。
「どうかした?ボーッとしてる」
ゆうくんが私の顔を覗き込む。
ぎゃーっ!近いってば!
私は咄嗟に、また1歩後ろに下がる。
「なっ、何でもないよ?」
「――…そう?」
「うん!」
焦りを隠すように、にかっと笑う。
ゆうくんは納得いかない、という表情で私を見てる。
うっ…この目に弱いんだよ~…。
は、話を変えてしまおう!
「ゆっ、ゆうくん、今日早いね!まだ8時前なのに」
昨日、私がバイトから帰ってきた夜10時には、ゆうくんの部屋はまだ真っ暗だった。
夜遅かったんじゃないかな…。
…って、彼女でもないのに余計なお世話か。
「あーうん!何か目ぇ覚めちゃってさ。天気もいいし!んー!」
ゆうくんはグイーンと背伸びをする。
気持ち良さそうな顔。
朝日が当たってキラキラして見える。
何かかわいくて、私の顔も緩んでしまう。