近いようで、遠い存在のキミ (完)
カツン。
「……ゆうぅ~!」
突然、耳に入ってきた声。
私は声の方を振り向く。
階段を上がりきったところに女の子がいた。
――わっ、かわいい…!
遠目でもわかる、かわいさ。
その辺にいるかわいい子の非じゃないくらい、めちゃくちゃかわいいんですけど!
「え、あみ?」
ゆうくんが驚いた顔をしている。
――え…知り合い…?
ていうか…『あみ』って…
私は必死に記憶をたどる。
あっ…女優の…!見たことある!
「わーん、ゆう~」
ドクンっ
私は呆然と二人の姿を見つめる。
あみさんが、ゆうくんの胸にしがみついている姿を。
ゆうくんの腕が、あみさんの背中を優しく包んでいる姿を。
「あみ、ここマズいから、中入って?ね?」
ゆうくんがあみさんの顔を覗き込んで、優しい声で諭す。
「うん…ごめんね」
「いいよ。大丈夫だから」
あみさんは涙を浮かべたクリクリとした大きな目で、ゆうくんを見上げる。
その瞳に答えるかのように、ゆうくんは笑みを浮かべて頷く。
あみさんが私の存在に気付き、私のことをじっと見る。
真っ直ぐな瞳に、私はドキッとした。