近いようで、遠い存在のキミ (完)
 

カツン。


「……ゆうぅ~!」


突然、耳に入ってきた声。


私は声の方を振り向く。


階段を上がりきったところに女の子がいた。


――わっ、かわいい…!


遠目でもわかる、かわいさ。


その辺にいるかわいい子の非じゃないくらい、めちゃくちゃかわいいんですけど!


「え、あみ?」


ゆうくんが驚いた顔をしている。


――え…知り合い…?


ていうか…『あみ』って…


私は必死に記憶をたどる。


あっ…女優の…!見たことある!


「わーん、ゆう~」


ドクンっ


私は呆然と二人の姿を見つめる。


あみさんが、ゆうくんの胸にしがみついている姿を。


ゆうくんの腕が、あみさんの背中を優しく包んでいる姿を。


「あみ、ここマズいから、中入って?ね?」


ゆうくんがあみさんの顔を覗き込んで、優しい声で諭す。


「うん…ごめんね」


「いいよ。大丈夫だから」


あみさんは涙を浮かべたクリクリとした大きな目で、ゆうくんを見上げる。


その瞳に答えるかのように、ゆうくんは笑みを浮かべて頷く。


あみさんが私の存在に気付き、私のことをじっと見る。


真っ直ぐな瞳に、私はドキッとした。

 
< 24 / 60 >

この作品をシェア

pagetop