近いようで、遠い存在のキミ (完)
あみさんはペコッと頭を軽く下げて、ゆうくんの部屋へと入っていく。
何のためらいもなく、すごく自然に。
私はゆうくんの部屋のドアを見つめたまま、動けなかった。
「りっちゃん?」
ゆうくんの声で我に返る。
「あっ、うん」
「えっと…ごめん。今日話せそうにないや。…また今度ゆっくり話そ?…ホント、ごめんね?」
ゆうくんが申し訳なさそうな顔で私を見ている。
「――あ、うん!大丈夫だよ!気にしないで?」
「…ごめんね。ありがとう」
「ううん…」
私は必死に笑顔を作る。
「じゃあ、またね。試験頑張ってね」
ゆうくんは『ごめん』と言うように手を顔の前にかざして、部屋に入っていく。
私だけがその場に残される。