近いようで、遠い存在のキミ (完)
その沈黙を破ったのは、ゆうくん。
「……ねぇ、りっちゃん」
「な、なに?」
「……キス、しよっか」
「!?」
な、な、な、なに!?
今、何て言った!?
キス…!?
「あ、あの…」
パニクり過ぎて、言葉にならない。
いやいやいや!
そうじゃない!
「だ、ダメだよ…だって」
ゆうくんには…
「…付き合ってる人、いる、し」
改めて口にすると…やっぱりツラいな…。
本当のことなんだって、私の中で認めることになるんだもん…。
「………」
ふっと笑う声が耳に入る。
「…なんてね。冗談だよ?覚えたてのセリフ、言ってみただけ」
ククク、とゆうくんから笑いの声がこぼれる。
「へ?か、からかったの!?」
「いや、少しは気が紛れるかなって思ったからさ。ぷ」
笑いを堪えているのが、ゆうくんの震える身体から伝わる。
「ば、バカ!」
ゆうくんから離れようとする。
でも、できなかった。
「ほら、動かない。また転ぶよ?」
「く…!」
悔しい…。
ていうか…この体勢もダメなんじゃないかな…。
こんな風に、彼女のことも抱き締めるの?
自分が虚しくなるだけのことを考えてしまう。