近いようで、遠い存在のキミ (完)
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ベンチとブランコと鉄棒があるだけの小さな公園に到着する。
かわいくて好きなんだよね。
まだまだ先の話だけど、春には桜がキレイ。
私は公園の入り口の手前で立ち止まる。
あ…先客だ。
ベンチに人がいる。
シルエットしか見えないけど、男の人だな…。
…入る勇気ないし、しょうがない…帰ろう。
私はくるっと踵を返し、歩いてきた道を引き返そうとする。
その時。
「……りっちゃん?」
「!」
私の心臓が跳ね上がる。
公園の中から、久しぶりに聞く声。
――…ゆうくんだ…。
あのシルエットはゆうくんだったんだ。
鼻の奥がツンとする。
わ、ヤバ…泣きそう…!
振り向けないよ…。
私はその場から動けなくなった。