近いようで、遠い存在のキミ (完)
表通りから女の子たちの声が聞こえてくる。
「あれ、絶対ハルカだったよね!?」
「絶対そうだって!」
ハルカがピクッと反応した。
あ、もしかして…追っかけられてるのかな?
ハルカの虜になっているのは私だけじゃないんだ。
人気あるってホントなんだな…。
ここも少し建物の陰にはなってるけど、見つかるのは時間の問題だ。
「むむ…」
くいっとハルカの服を引っ張る。
私はジェスチャーで『大声出さないから』と、自分の口に人差し指をあてた。
ハルカが一瞬驚く表情をしたのを、私は見逃さなかった。
ハルカの指がゆっくりと私の口から離れる。
「…ありがとう」
ハルカの笑顔に、私の心拍数は一気に上がる。
私は首を横に振る。
お礼を言われるなんて思わなかった…。
「あ、あの…迷惑でなければ、裏道教えますよ?」
小声で伝える。
「ほんと?助かる」
「えっと、じゃあ…」
私が裏通りの方を指差した時だった。
「ねぇ、裏通りじゃない!?そこの道、確か裏に繋がってたよね!?」
バタバタと足音が近づいてくる。