カラフル。
私利私欲



…時々、ふと思う。

“なぜ、人は生きているのだろう?”と。

愛する誰かの為?

困っている人の為?

…ううん、そんなはずはない。

そんなものは偽善であって、決して慈悲心がもたらすものではない。

そうだ。

所詮は自己満足なのだ。


「下原さん、お疲れさま。もうあがっていいから」

「はい、ありがとうございます」


私は、少なくともそう思う人の1人…下原夏紀。

今年で24。

今はOLと、本屋でバイトをしている。

それなりに生活はしていける。

…けれど、それに満足しないだけ。


私は月明かりと電灯が灯る薄暗い道をパンフスの音だけを聞きながら家路に向かう。

誰かが、人間は感情の生き物だと言ったが、まさにその通りだ。

感情で人を傷つけ、過ちを犯し、それにさえも気づかない。

なんて愚かな生き物だろう。

そう思わざるをえない。


「下原さん!」

「…?」


私がまさに今、鍵穴に鍵を差し込もうとした瞬間、誰かが私を引き留めた。




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