カラフル。


――あれから私はベッドに入っても寝付けずにいた。

家族、友達、親戚…。

私にそんな人は居ない。

私は施設で育ち、施設に世話になった。

施設で共に暮らしていたみんなこそが、血の繋がりなど関係のない家族なのだ。

私の両親は私を捨てた。

そう信じて生きてきた。

それなのに5年前の春、優奈が私の元に訪ねてきた。


『夏紀…あたしは、あなたのお姉ちゃんよ』


頭に衝撃が走った。

姉と言う優奈の身なりは、煌びやかで高級感溢れる春物のコートを羽織っていて、いかにも裕福な生活がうかがえた。

それから優奈は私に洗いざらい、下原家における問題を話し始めた。

私の父に当たる倉知勝は大手企業の社長であった。

そして私の母に当たる下原早苗はスナックのママ。

2人は不倫の関係にあり、私は腹違いの子。

そして早苗は病気で逝き、取り残された私は施設に放り込まれた…。

酷い話だ。

そんな姉が私は憎くて仕方なかった。

倉知は私を捨てた。

私と母を捨てた。

その実の娘が私の姉と言う。

冗談じゃなかった。

だから私は姉から一切の連絡を断った。

なのに姉はことあるごとに私の元へ訪れ、一方的に話をしていた。




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