僕等の恋に愛はない

 「椿が式に出たくない。けど、式には意味がある。なら、椿という殻を被った他の奴が出れば、出席したことになるだろ」


 あぁ。そういうことかと納得し、静は自分の髪を両手で掴み、根元から力ずくで引っ張った。



 「おまっ…禿げるぞ…」

 
 数十本の抜き取った髪の毛を払い落とし、静は俯いたまま笑った。


 「…椿ちゃん…そんなに俺との結婚が嫌か…」


 「気にすんな。それでもいいとお前が望んだことだ」


 ポンっと背中を叩く狼狽の目は、冷たかった。


 

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