ランデヴー II
【prologue ―霞む未来―】
「美咲ちゃーん、初めましてー。こんにちは!」


目の前のベビーベッドで不思議そうに目をくりくりとさせ、私を見る美咲ちゃん。


まだ生まれてから2ヶ月しか経っていない彼女は、本当に小さくて可愛らしい。


手元に握っていたオモチャをゆらゆらと揺らしてやると、「うきゃきゃ」と笑ってくれた。



「可愛いねぇ、いいなー、いいなー」


「いいでしょうー」


佐和子がトレイからお茶とケーキ出しながら、「んふふ」と幸せそうに笑って見せる。



結婚してからしばらく働いていた佐和子は、妊娠を機に会社を辞めた。


今は専業主婦として、母親として、新しい生活を送っている。


このマンションも、最近購入したものだ。


都心からは少し離れるが、閑静な立地で環境も良いのが気に入ったそうだ。



「何か幸せそう。羨ましいなぁ」


自ら持参したケーキを「いただきます」と言って頬ばりながら、ふぅと溜息を吐く。


私には程遠そうな人生だ。
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