ランデヴー II
私には佐和子が言わんとしていることが、良くわからなかった。


好きじゃなかったら付き合わないし、それ以外に何があると言うのだろうか。



「私……今までゆかりの恋愛ってそんなに知ってるわけじゃないけどさ……。恋愛すると女ってホラ、もっと嬉しそうだったり楽しそうにするものなんじゃないの?」


「…………」


「少なくとも香川さんの話をする時のゆかりは、もっと幸せそうだった気がするなぁ。今のゆかりからは、そういう浮かれてますオーラがちっとも感じられないんだけど?」



佐和子の言葉はあまりにもピッタリと的を射ていて、私は返事に詰まってしまった。


確かに私は、陽介に抱いていたような狂おしい程の愛情を、賢治には感じていない。



でも、あの頃とはそもそも比べられるような話ではない。


今思えば、陽介とは障害があったからこそあんなにも夢中になれた気がする。


どんなに願っても一緒にはなれない不自由さが、私の心をあんなにも煽り立てたように思うのだ。



今はもう、そんな恋愛は望んでいない。


もっと穏やかで安らげる日々を、私は欲していた。



……そう、賢治といるとまさにそんな感じになれる。


決して情熱的ではないが、その安定感はたまらなく心地良い。
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