ランデヴー II
穏やかじゃない私の気配を察したのか、紗英ちゃんはグッと唇を噛み締め目を伏せると、もごもごと口を動かす。



「もう、いい……。ゆかりちゃんなんかに私の気持ちなんてわかんないんだから」


そう吐き捨てるように言うと、小走りで出て行ってしまった。



私はしばらく呆然とその場に立ち尽くした。


そんなの、わかる訳ない。


私と紗英ちゃんは違う人間なんだから。


何だかどっと疲労感に襲われる。



こうして彼女に近付けば近付く程、難しい人だと感じた。


悪い人ではない、いい所だってある。


ただ私が見付けられてないだけで、きっともっといい所が……。


そう自分に言い聞かせるが、そんな気力は溜息と共に吐き出されていくようだ。



私にはもう紗英ちゃんの考えていることが、さっぱりわからなかった。
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