ランデヴー II

<向けられた敵意>

私が持っている『普通』という感覚が、世間一般でも『普通』だとは限らない。


そんなものの定義はそもそも曖昧だったりするし、沢山の人間がいるのだからもちろん自分の考えだけが正しい訳ではないとわかっている。



それでも――。


紗英ちゃんの行動は私にとっては理解し難いもので、やっぱり私の中の『普通』とは食い違うものだと思った。



だが私は紗英ちゃんとの間に起こった出来事を、人には言えなかった。


週末一緒に過ごした賢治にも、紗英ちゃんの話は一切しなかった。



言えば悪口にしかならないから。


もう私の中での紗英ちゃんの存在は最悪以外の何ものでもなく、自分を正として彼女を悪としてしか人に話すことができないような気がした。



世の中には色んな人がいる。


以前私が総務部で出会った先輩の堺さんだって、私にとって理解できない人の1人だ。


嫌な思いもいっぱいしたし、大嫌いだった。



だが彼女の中には彼女なりの考えがあり、私に嫌がらせをするという行動には彼女の中での正当な理由があるものなのだ。


私はそれを身をもって教わり、それ以来多少理不尽な出来事があっても冷静に自分の中で消化できるようになった。


その点に於いては、彼女に感謝できるとも言えるだろう。
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