ランデヴー II
「坂下さん、販売戦略倉橋さんから1番にお電話です」
隣のエリアから、派遣社員の川口さんが私に電話を繋いでくれた。
倉橋君と関わりを持つようになってから数日が過ぎたが、やはりこうして電話を受けたりすることにはなかなか慣れない。
朝まだ出社したばかりの私は、「はい」と返事をして受話器を取った。
「坂下です」
『倉橋です、お疲れ様です』
「お疲れ様です」
電話の向こうからは慣れ親しんだ声が聞こえ、つい頬が緩んでしまう。
再会したばかりの頃に比べれば、かなり動揺せずに話せるようになったと思う。
『この前言ってた費用振り替えの件なんですけど、やっぱり2課でした。後で書類取りに行きますね』
「そう、了解です。準備しておくね」
『お願いします。あと、副資材が足りないって言ってた件なんですけど――』
そうしてまとめて3件ほど確認をされ、全てに答えた私が「じゃ、また後で」と電話を切ろうとした時。