ランデヴー II
「倉橋君に告白されたこと、あるんでしょう……?」


抑えた声で探るように問われ、私は一瞬ビクッと反応してしまう。



もしかして……倉橋君がこの前「言いたくない」と言っていたのは、このことだったのだろうか。


確かに私は紗英ちゃんに倉橋君とのことを話してはいなかった。


でもそれは過去のことだし、言う必要がないと思ったからだ。


だから隠したということとは、少し違うと思う。



「どうして教えてくれなかったの? 本当はゆかりちゃん、私のこと見下してるんでしょう? 私のこと……馬鹿にしてたんでしょ!?」


語尾を荒げてそう言い放った紗英ちゃんは、少し大きくなった声を恥じるかのように、テーブルにあるコップを手に取りゴクリと飲み込んだ。


だが興奮冷めやらぬ様子で、肩で息をしている。



私はそんな紗英ちゃんをしばらくじっと見つめ、そして小さく息を吐いた。


そんな風に感じていたなんて……気付かなかった。



「私……紗英ちゃんのこと、見下したり馬鹿にしたりなんてしたことは1度もないよ。確かに倉橋君から告白されたことはあるけど……もう昔の話だし、今は違うから。私には付き合ってる人がいるし、今更倉橋君とどうこうなるはずもない。それは……わかって欲しい」


私は今の自分の精一杯の気持ちを、できる限りの冷静さを持って話し聞かせる。
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