ランデヴー II
でも……今なら言える気がする。


これは倉橋君が与えてくれた、チャンスなのかもしれない。


ズルい私が、きちんと自分の気持ちを伝えられるように。



「……うん。ごめん、やめて欲しいってずっと言えなかった。紗英ちゃんは紗英ちゃんで、私は私以外の何ものでもない。だから……紗英ちゃんはきっと、もっと自分自身のいい所を生かした素敵な女性になれると思う。誰にも似てないオリジナルの紗英ちゃんを、きっと見付けられるはずだから」


私に言葉に、紗英ちゃんはハッとしたように目を見開いた。


その目に、みるみるうちに涙が浮かぶ。



「ゆかりちゃん……ごめんね。私、ゆかりちゃんが羨ましかったの。倉橋君、言ってた。ゆかりちゃんは自分にとって大切な人だ、って……。だから、何だか悔しくて……守山さんにも、ちゃんと謝るから……」


「紗英ちゃん……」


両手で顔を覆いながら呟くように話す紗英ちゃんは、とても素直だった。


そんな彼女の姿に、私までもらい泣きしてしまいそうになる。



自分の気持ちをちゃんと話せて良かった。


紗英ちゃんにわかってもらえて、良かった。


心からそう思えた瞬間だった。
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