ランデヴー II
「大切な人、か……」
紗英ちゃんが「戻るね」と言ってトボトボとカフェテリアを出て行く姿を見送り、1人ポツリと呟く。
倉橋君が私をそんな風に思ってくれていることは、単純に嬉しかった。
でも結局それは、人としてということに過ぎない。
憧れだとか、尊敬だとか、そういう気持ちは全て、男女関係なしに抱くものだ。
それが愛情とはまた別の感情なのだということを、私は痛い程ににわかっている。
勘違いしたり、期待してはいけない。
目を閉じて、何度も何度も自分に言い聞かせる。
でも今の私は賢治との関係に、もやもやと曇り空のような気持ちを抱いていた。
結局あの時曖昧なまま終わらせてしまったことが、今も私の心を晴らしてはくれない。
それはもしかしたら、賢治も同じかもしれない。