ランデヴー II
その日、私はいつものように会社での業務を終え、コートを羽織って会社を出た。
もうすぐ桜の季節だというのに、春の気配はなかなかやってこない。
無理矢理季節に合わせて薄手のコートを羽織るも、ストールが欠かせない肌寒さだ。
時刻は22時を回り、食事をどうしようか考えながらのんびりと歩く。
最近平日は遅くなるということもあり、1人で簡単に済ませていた。
賢治とはあれから何かが少し違ってしまい、一見変わらぬ週末を共に過ごしながらも気持ちは追いつかないような、そんな奇妙な感覚だ。
いつも通りに振る舞いながらも、ふとした瞬間ぎこちない空気が漂う。
そこに微妙なズレを感じているのは、私だけなのだろうか。
来月になったら、一緒に誕生日プレゼントを選びに行こうと言われた。
指輪を贈りたいから、軽い気持ちで受け取って欲しいと。
正直嬉しいという気持ちにはなれず、そんな自分に少し驚いた。
1度は共に歩んで行こうと決心した相手であるはずなのに。