ランデヴー II
それよりも、私はこのまま賢治との関係を続けて良いのだろうか。


そんな身も蓋もない思いだけが頭を過ぎるのだ。



疑問だらけなのに保身に走って別れに踏み切ることもできず、ただ変わらぬ日々を模範的に過ごすだけ。


賢治が本当はどう思っているのか……それすらも、確かめることはできないままに。



重苦しさに溜息を吐きながらふと前方に目を向けると、そこには良く見知った後ろ姿があった。


それを見て、「倉橋君……」と心の中で呟く。



彼とはあの日非常階段で会って以来、2人で話をすることはなかった。


時々何か言いたげな視線を感じることはあったが、私はその全てを無視した。


紗英ちゃんと彼が今どうなっているのかも、何も知らない。



でももう、倉橋君とは必要以上に関わるべきではない。


賢治との関係に終止符を打つにしても、そうでなくても。


自分が深い傷を負うのが嫌なのならば、それが1番良い事だと感じる。
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