ランデヴー II
だから私は倉橋君の姿は見なかったことにして、つかず離れずの距離を保って歩くことにした。


駅に着けば、別々の路線になるはずだ。


あと少しの間だけ、このままのペースで歩き続ければ……。



そう思いながら後ろ姿を眺めていると、彼が携帯で何やら話をしていることに気付く。


そしてふと……彼の足が突然止まった。


その場に立ち止まったまま、手にしていたカバンをドサリと地面に落とす。


するり、と急に手に力が入らなくなったように見えた。



突然の彼の不自然な行動に、私の胸に動揺が走った。


と言うよりものすごく心配で不安な気持ちが込み上げる。


一体どうしたんだろう……。



居ても立ってもいられなくなった私は倉橋君に駈け寄ると、地面に落ちたカバンを拾い上げてその顔を窺った。


もしかしたら、具合が悪くなったのではないかと思ったのだ。



見ると彼は携帯を耳に当てて地面に視線を落とし、反対の手で額を抑えたまま固まっている。


僅かに指が震え、その姿は今にも崩れ落ちそうな程に頼りない。
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