ランデヴー II
久しぶりに食べたおでんは美味しく、私は更に2つ程種を追加してしまった。
だがもう遅い時間ということもあり、もっと食べたい気持ちを抑えてお店を出ることにする。
既に店内に他の客はおらず、私達が最後の2人だった。
「倉橋君、帰ろう? 倉橋君」
そう言って肩を揺すると、彼は「んー……」と唸りながらゆっくりと顔をこちらに向ける。
顔を赤らめて目を閉じたままの倉橋君はまるで隙だらけで、腕に押された頬には皺が寄り、いつもの整った顔が台無しだ。
でも気の抜けたようなその表情は、何故か私の胸をドキドキさせた。
「水、飲んで」
そう言って目の前にコップを近付けると、彼はうっすらと目を開けて私を見る。
そしてもそもそと起き上がり素直にそれに口を付けると、まるで飼い犬のように水が入って来るのを待っている様子だ。
私は彼の背中に手を回し、こぼれないように気を付けながらコップを傾けた。