ランデヴー II
「んっ……」


口の中に吸い込まれていく水を見つめながら、私は何だか心が満たされるのを感じていた。


倉橋君の世話を焼くという行為が、無性に嬉しかったのかもしれない。



彼はそんな私の気も知らず、美味しそうに水を飲み干していく。


私はやっぱり……こんな倉橋君でも愛おしくてたまらないのだ。



「ごちそうさまでした」と言ってお金を払い立ち上がると、倉橋君はぼんやりと私の方を見上げている。



「立てる?」


「はい……」


コシコシと目元を擦りながら同じく立ち上がった倉橋君の肩に、コートを掛けてやる。


そしてカウンターの下に無造作に押し込めてあったカバンを取り出して手渡すと、私も自分のコートを着た。



お店の扉を開けて振り返ると、ゆらゆらと体を揺らしながらおぼつかない足取りで追いかけてくる倉橋君の姿がある。


私は小さく息を吐き出して引き返すと、倉橋君の体を支えた。


彼の重みと温もりをズッシリと体に感じ、意識があまりないのは分かっていても、酷く胸が高鳴った。
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